東京国立近代美術館、NPO法人建築思考プラットフォーム主催

PASS the BATON

倉俣史朗を語ろう

シンポジウム、勉強会レポート

 

NPO法人建築思考プラットフォーム(PLAT)は、日本のデザインアーカイブへの意識向上目指して、戦後のデザインを牽引してきた重鎮の作品や資料の現状をヒアリングし、ウェブサイトで公開しています。活動4年目を迎え、デザイナーの仕事や考え方を次世代に「PASS the BATON(伝え、考えてもらうこと)」する活動を始めます。 2019年は、1991年に急逝し、伝説的デザイナーとして語り継がれる倉俣史朗の仕事と考え方を再考するシンポジウム「PASS the BATON 倉俣史朗を語ろう」を開催します。デザインが変貌する過渡期を歩む40歳前後のクリエーターたちの視点から倉俣を語り合うもので、その死から約30年、次世代に倉俣史朗をつなぐことを目的とする、いわば入門編のシンポジウムです。
開催に先立ち、5月17日、倉俣史朗の数少ない現存する空間であるクラマタデザイン事務所で、スピーカーによる勉強会を行いました。その模様をレポートします。

●場所:
クラマタデザイン事務所

●出席者:五十音順、敬称略
五十嵐久枝(インテリアデザイナー)
倉俣美恵子(クラマタデザイン事務所)
近藤康夫(インテリアデザイナー)
田川欣哉(デザインエンジニア)
田根 剛(建築家)
保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員)
山下喜左栄(株式会社イシマル取締役)
関 康子(NPO法人建築思考プラットフォーム〈PLAT〉理事)
※田村奈穂さんはNY在住のため欠席

 

倉俣さんの世界にすっぽり包まれて

世田谷の閑静な住宅地に現在のクラマタデザイン事務所はある。
勉強会当日、勉強会の参加メンバーは三々五々集合。現在は事務所として使われている倉俣さんの空間には、60年代の「引出しの家具」、名作「ミス・ブランチ」、「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」、イッセイ ミヤケのための香水瓶のプロトタイプ、「HAL2」「エキスパンドメタル背の椅子」などのチェア、時計「ジャスト・イン・タイム」、傘立て、ハンドバッグ「コパカバーナ」などの作品のほか、ドローイング、スケッチ集などがあり、まるでギャラリーのよう。貴重な作品を目前に参加メンバーの話は尽きない。5時をだいぶ過ぎて、勉強会は始まった。

 

 

 

倉俣さんを知る人たちの倉俣さん

クラマタデザイン事務所の元スタッフである近藤康夫さん(1970年代後半)、五十嵐久枝さん(1980年代後半)、さらに倉俣さんの仕事には欠かせない施工会社イシマルを代表して参加してくださった山下喜左栄さん(現イシマル取締役)、夫人の美恵子さんから、在りし日の倉俣さんの仕事ぶり、人柄など、貴重なエピソードをお話しいただくことから勉強会は始まった。

中央のテーブルは、かつて六本木のクラマタデザイン事務所にあった。空間に合わせてサイズを調整して使っている。使いやすい当たり前のデザイン。

「日本でもこういうデザインをしている人がいるんだ、と。それが正直、私の第一印象で…」と、倉俣さんとの出会いを語る近藤康夫さん。

「アルバイトの最後の日に倉俣さんに呼ばれて、『来年から、働きませんか?』と言われて、最初は『え〜?!』と。『ラッキー!!』ではなく、『ありえない!!』と思って、ただただ驚きました」と語る五十嵐久枝さん。

イシマルの山下喜左栄さんは「『ゼール』というバーのインテリアをやっているとき、お昼近くに現場に行ったときにランチをご一緒したんですが『ビールを!』と言われて、ランチビールを飲みながらいろいろお話したことをはっきり覚えています」と当時の現場を振り返る。

「娘と遊ぶことが好きで、遊びや遊び道具もいろいろ自分でつくって楽しんでいました。子ども用の机や椅子などの家具もつくったり。そういうことは惜しみなく…どこからエネルギーが出てくるのかなというぐらいでした」と、もう一人の倉俣さんを語ってくれた美恵子さん。

 

 

倉俣さんをもっと知りたい人たちの
倉俣さん

倉俣さんを知る近藤さん、五十嵐さん、山下さん、美恵子さんからの話の後、倉俣さんをもっと知りたい田川欣哉さん、田根剛さん、保坂健二朗さんから、仕事の進め方、事務所のマネジメント、スタッフとの関係、デザインの発想方法、素材との出合いや使い方などなど質問が続き、予定時間を大幅に超えても話は尽きない…。

『倉俣史朗読本』(ADP、2012)のなかで、アーティストの田中信太郎さんと倉俣史朗さんについて語り合った保坂さんは、「やっぱり『ミス・ブランチ』が好きで、東京国立近代美術館に入って最初に企画をしたのが『ミス・ブランチ』をシンボルに、スピードをテーマにした展覧会だったんです。スピードには速さだけではなく、静止やスローという意味も含まれる。その象徴として『ミス・ブランチ』はぴったりだと思ったのですが、まあ、ちょっと早すぎた。僕もそのときまだ若かったので…」と、ミス・ブランチへの想いを語る。

デザインファームTakramを主宰する田川さんは、「建築家やデザイナー、アーティストを見ていると、自身で完結されている方と、次の世代がちゃんとつながっていらっしゃる方と、二つに分かれると思うんです。作品を拝見していると倉俣さんは自己完結型に見えるんだけれども、実際には近藤さんや五十嵐さん、吉岡徳仁さんなどにつながっている。ここが僕のなかでは一致していないんです。倉俣作品をつくることと、名伯楽のような後に血脈が広がり…、そこがどんな感じだったのか興味があるのです」。

倉俣さんの大ファンという田根さんは「(倉俣さんは)ご自身が今これからどこに向かおうかというところと、世間との距離感を絶妙に保たれている。社会や世間に対する思いをもちながらも、個としてどこにも属さない強さがある。言葉にしてしまうと消えてしまうイメージを、直接的でない異次元に変えてしまうあたりも、みなさんのお話を聞いていてすごいなと感じました。やっぱり、後にも先にも倉俣さん以外はいらっしゃらないなと思います」とその想いを語る。

倉俣史朗は語り尽くせない。勉強会は予定時間を大幅に超えて、22時前に終了した。
11月10日のシンポジウムでは、勉強会を経てどのような倉俣論が展開されるか、乞うご期待ください。PLATでは、勉強会、シンポジウムで繰り広げられた倉俣論を編集し、『倉俣史朗を再考する(仮題)』書籍化を目指しています。

 

 

 

東京国立近代美術館、NPO法人建築思考プラットフォーム主催

PASS the BATON

倉俣史朗を語ろう

シンポジウム開催

 

日 程:2019年11月10日(日)13:30~16:30 ※開場13:00
会 場:東京国立近代美術館(本館) 講堂
    東京都千代田区北の丸公園3-1

スピーカー:
五十嵐久枝(インテリアデザイナー)
桑山秀康(インテリアデザイナー)
近藤康夫(インテリアデザイナー)
田川欣哉(デザインエンジニア)
田根 剛(建築家)
田村奈穂(デザイナー)
保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員)
関 康子(NPO法人建築思考プラットフォーム〈PLAT〉理事)

聴 講:無料、事前申込不要、当日10:00より1階受付で整理券を配布
主 催:東京国立近代美術館、NPO法人建築思考プラットフォーム
協 力:クラマタデザイン事務所
問合せ:NPO法人建築思考プラットフォーム http://npo-plat.org/

※詳細は、東京国立近代美術館とNPO法人建築思考プラットフォームのウェブサイトにて随時、お知らせします。

 

 

 

 

 

 

HEARING & REPORT

どうなっているの?
この人たちのデザインアーカイブ

What's the deal? Design archive of these people

グラフィックデザイナー

原 弘    1903年生まれ*

亀倉 雄策  1915年生まれ*

粟津 潔   1929年生まれ*

永井 一正  1929年生まれ

田中 一光  1930年生まれ* NEW

勝井 三雄  1931年生まれ*

福田 繁雄  1932年生まれ*

杉浦 康平  1932年生まれ

仲條 正義  1933年生まれ

石岡 瑛子  1938年生まれ*

小島 良平  1939年生まれ*

浅葉 克己  1940年生まれ

松永 真   1940年生まれ

佐藤 晃一  1944生まれ*

河北 秀也  1947年生まれ

井上 嗣也  1947年生まれ

八木 保   1949年生まれ

秋田 寛   1958年生まれ*

インテリアデザイナー

倉俣 史朗  1934年生まれ*

北原 進   1937年生まれ

大橋 晃朗  1938年生まれ*

内田 繁   1943年生まれ*

杉本 貴志  1945年生まれ*

植木 莞爾  1945年生まれ

北岡 節男  1946年生まれ*

藤江 和子  1947年生まれ

飯島 直樹  1949年生まれ

 

テキスタイルデザイナー

粟辻 博   1929年生まれ*

 

CI

中西 元男  1938年生まれ

 

家具職人

宮本 茂紀  1937年生まれ

調査対象については変更する可能性もあります。

調査対象(個人)は、2006年朝日新聞社刊『ニッポンをデザインしてきた巨匠たち』を参照し、すでに死去されている方などを含め選定しています。

*は死去されている方です。